みなさんこんにちは! 研究室説明会でビラを配り始めた2人のうちの1人、あさだですよー。 あれは確実に宣伝になった、俺はそう信じている。 (しかし問い合わせのメールは一通も来ていない。)
例のビラ
松澤・岡田研究室宣伝_v2.jpg 今回は修士1年のさとうさんにお話を伺いました。
DPPk_0010.JPG ――よろしくおねがいします。 佐藤 よろしくお願いします。 ――まず、佐藤さんがどのような研究を行っているのか、教えていただけますか? 佐藤 はい。私は、20GHz帯のVCOの研究を行っています。VCOとはVoltage Controlled Oscillator、つまり電圧を調整することで発振周波数を変化させることができる発振器の事ですね。発振器には大きく分けて2つ種類があります。1つはインダクタとキャパシタの共振を利用したLC型、もう一つはNOT素子をリング状に奇数個繋げたリング型です。私は雑音や消費電力の小さなLC型の研究を行っています。 ――何に用いられるんでしょうか。 佐藤 60GHz帯の無線通信回路です。回路の中で60GHzの正弦波を作らなくてはならないのですが、60GHzのVCOを直接作るのは制約が大きく困難なのです。なので私たちは20GHzの信号をまず作ってそれを3倍にするという手法をとっています。 ――具体的にはどういうことをしているんでしょうか? 佐藤 まずは設計ですね。周波数可変範囲、雑音性能、消費電力、面積などの要求から、回路構成を決めていきます。一番大切なのは周波数ですね。狙った周波数の信号を出力できないと話になりません。しかしこれが面倒で、20GHzともなると寄生成分、すなわち配線間のキャパシタンスや配線自体のインダクタンスというのが無視できなくなるんです。つまり見えないキャパシタやインダクタがそこら中についていると。いかにこれを計算で求めるか、というのは大きな課題です。この解析は非常に面倒で、長い時間を要していますがいまだに完全には解決していません。 ――寄生容量ってどのぐらいつくんですか? 佐藤 10fF(編注:フェムトファラッド。10の-15乗ファラッド)オーダーですね。非常に小さい。しかし周波数の可変範囲に大きく影響します。 ――次に雑音、ですか? 佐藤 そうですね。抵抗の熱雑音、トランジスタのフリッカー雑音(1/f雑音)など、雑音の発生源は無数にあります。いかにこれらを小さくしてSN比を高めるか、というのも非常に重要です。あとは消費電力と面積ですが、面積はLとCの素子でサイズでほとんど決まるので変えるのは難しいですね。消費電力は…努力あるのみです(笑) ――(笑) 研究で気を付けているのはどんなことですか? 佐藤 「決してブレるな」ということです。この言葉は私が尊敬する方からいただいたお言葉なんですが、自分を支える非常に大きな柱の一つになっていますね。研究はすごい地道だったり面倒だったりすることも多いのですが、自分の信念を曲げない、自分のやるべきことをやる。これを続ければ結果は必ずついてきます。3年生のみなさんにもぜひこの言葉を心に留めておいてほしいですね。パイオニアへの近道です。 DPPk_0015.JPG ――次に研究室生活についてお尋ねします。まず、この研究室を選んだ理由をお聞かせ願えますか? 佐藤 回路設計に興味があったからです。電気電子工学科で回路設計の研究を行っているのは松澤・岡田研究室だけです。それに松澤先生は世界的に有名な教授ですし、岡田先生は若くて勢いがあると感じました。 ――なるほど。実際研究室に所属してもうすぐ2年が経つわけですが、研究室に所属する前と後でギャップを感じたところはありますか? 佐藤 教授ですね。講義の時の印象とは全く違う。 ――厳しいってことですか?(笑) 佐藤 そうですね(笑) 2人とも講義の時は楽しい先生なんですが、ゼミ発表やミーティングの時は結構厳しいですね。ただそれが必ずしも悪いわけではなくて、研究をよりよいものにするためには必要不可欠なことだし、学生の成長にもつながっていると思います。この研究室に入ってよかったことは何よりもメンタル的に成長できたことですかね。逆に心が折れかかるときもありますが(笑) ――その大変な研究生活を支えている「やりがい」っていうのはなんでしょうか。 佐藤 一番大きいのは学会発表ですね。学会と言っても国内の学会から世界的な大きな学会までありますが、大きい学会で発表できること自体がまず嬉しい。学会は誰でも発表出来るわけではなくて、あらかじめ予稿を提出する必要があります。そしてその中から選ばれた研究者だけが発表できるのが普通です。大きな国際学会は採択率が低く、発表すること自体が名誉なことです。それともう一つは旅行できることですね。東京以外でやる学会で発表する時は出張に行きます。出張費用は研究室から出ますし、更に観光もできる。学会発表はいいこと尽くめです。 ――なるほど。出張は私も大きな楽しみの一つです。次は普段の生活について伺いたいのですが、一日のスケジュールについて教えていただけますか? 佐藤 私の場合は日によって全く違いますね。朝来て夕方帰ることもあれば、昼来て昼帰ることもあります。うちの研究室はコアタイムがなく、「やるべきことをやればいい」というスタンスなので、生活スタイルは個人個人でも全く違います。 ――それでは研究室に来なくてもいい? 佐藤 研究はグループで行うことが多いので、暇な時期ならまあ休めます。そうでなくともあらかじめ休むことを周りに伝えておいて迷惑がかからないようにしておけば大丈夫です。ただ月曜日の夕方はゼミがあるので別です。基本的にゼミは出席必須、時間はだいたい17時~20時ですかね。 ――ゼミはどういうことをやるんですか? 佐藤 毎週3~4人ずつ自分の研究を発表します。だいたい年次順に発表していって、半年に1回、発表の順番が回ってきます。ただし4年生は前期はやりません。後期の終わり、2月ぐらいが最初の発表です。まあ卒論発表の練習みたいなものです。 グループによってはゼミの他に論文紹介をやったり定例ミーティングをやっていたりします。これはグループによりけりですね。 ――夏休みや冬休みはありますか? 佐藤 ゼミはないのでいつからいつまで休みます!と宣言すれば休めます。留学生なんかは数週間国に帰る人も多いです。 ――留学生が多い研究室なんですよね? 佐藤 そうです。半分ぐらいが留学生なのかな。日本語ペラペラの人も全然できない人もいますが、色々な国の人とコミュニケーションを取るのは楽しいですよ。うちの研究室は人数が多くて学生室が4箇所に分かれているのですが、部屋ごとに違った雰囲気が漂っていて面白いです。 ――最後に3年生のみなさんにメッセージをお願いします。 佐藤 悩んだところで、どうせ研究を始めてみないとわからないというのが正直なところだと思います。でもだからといって何も考えずに研究室に入るのではなくて、自分が納得できる研究室選びをしてほしいですね。あと一応うちの研究室の宣伝をしておくと、とっても楽しい研究室なのは間違いないです。学生が多いので趣味や意見が合う人が必ずいます(笑) ――確かに(笑) 本日はありがとうございました。 佐藤 こちらこそありがとうございました。 DPPk_0022.JPG 佐藤 たかひろ氏 プロフィール 19871986年東京生まれ。2010年に東京工業大学工学部を卒業。現在、東京工業大学大学院理工学研究科に所属。研究室ではLC型発振器について研究を行っている。カメラはD5000。色白。